トップページ > 雑誌掲載・連載記事

ネットへの投稿と拡散にご注意

アルプス国際行政書士事務所電話番号

旭川アルプス国際行政書士事務所
〒071-0173
北海道旭川市西神楽北1条4丁目
TEL/FAX 0166-75-5750

旭川の法律相談(相続/会社設立/交通事故/借金/離婚/探偵など)お任せ下さい!

 第34回 ネットへの投稿と拡散にご注意

 第34回はネットへの投稿について述べたい。

 カメラ付携帯やスマホの普及により、事件や事故のニュースで使われる写真や動画のほとんどは、現場に駆けつける記者から、その場に居合わせた一般市民からの提供のものに変化してきた。

 また、SNSにより、テレビや新聞で報道される前に個人が発信できるようになり、報道機関が報じない情報も全世界に容易に拡散させることができるようになった。

 一方で、被疑者や容疑者の家族、親族が標的にされ、名前はもちろん家族構成や勤務先などもネットで暴露されることが多くなった。容疑者との関係は一般市民には分からないし、犯人とはまだ決まっていない段階でその親族を追い詰める構図は行き過ぎであり、まさしく私刑といえよう。

 これらを投稿したり拡散させたりする人は、最初は正義感によるものかもしれない。連日報道されているにも関わらず飲酒運転や高齢運転者による悲惨な事故は絶えることがないが、加害者の刑は極めて軽い。そのため社会全体の怒りは加害者のみならず、加害者の親族にも向けられている。

 また、悪質な加害者に対する捜査機関や司法の手は緩い。池袋母子死亡事故では、逮捕されず容疑者や被疑者とも呼ばれない加害者に対して国民の怒りが紛糾した。マスコミは入院中で逃亡の恐れがないから逮捕しないという警察の発表や弁護士の見解をそのまま報道したが、退院後も否認を続けているのに逮捕されていない。その後も、同様の高齢者による事故では入院してもすぐに逮捕されているし、京都の放火殺人事件でも加害者は危篤状態にもかかわらず逮捕状が請求されている。実際、刑事訴訟で有罪になるよりも、逮捕され氏名等が公表されることの方が容疑者にとってダメージが大きく、このような矛盾や捜査機関、司法への不信感が誤った正義感を増幅させ、ネットでの攻撃に走らせている。

 さらに許されざるべきことだが、事件とは関係のない人が犯人扱いされ、デマが流布される事件も起きている。これらは正義感のみならず、報道機関が犯人を特定する前に自分が犯人を見つけ出すことへの高揚感によるものもあろう。もっともその情報源は極めて不確かなものであり、誤った情報を流布させれば、投稿者自身が刑事責任や損害賠償責任を問われかねない。

 事件や事故とは異なるが、マナー違反の観光客を無断で撮影し投稿したり、拡散させる書き込みも多くみられる。農地への立ち入りは大きな迷惑であるが、都会の人にとっては知らないこともあろう。もし、自身が禁煙場所とは知らずに喫煙しているところを撮影され悪質な観光客として世界中に流布されたら憤慨するであろう。

法の運用に不公平な面はあるものの、司法に任せることが法治国家なのである。