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名誉棄損罪と侮辱罪とは

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 第43回 名誉棄損罪と侮辱罪とは

 第43回は名誉棄損罪と侮辱罪についてお話ししたい。

 名誉棄損罪とは、刑法第230条第1項に規定されており、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」とある。

 まず、名誉毀損とは、その人や法人等の社会的評価や評判を下げることをいう。「公然と」とは、不特定多数の人が知り得る状態のことをいう。つまり、大勢の人の前で名誉を棄損する行為であり、これには多くの人が閲覧できるインターネット上で名誉を棄損する行為も含まれるが、実際に閲覧した人がいたかどうかは問わない。一方で、他の誰にも聞かれない空間で、知人や友人に対して名誉を棄損しても公然とはいえずこの罪には問われない。メールやSNSのメッセージなども、複数人が閲覧できる状態でなければ公然とはいえないであろう。そして、「事実を摘示」とあるが、これは具体的な事柄を述べるという意味であり、「事実の有無にかかわらず」とあるように、その内容が真実であるか否かは問わない。例えば、ネットで氏名を掲載するなど個人を特定できる状態で「不倫をしている」などと投稿すれば、不倫が真実であったとしても罪に問われる。また、あおり運転をする運転手や車両ナンバーの動画をネットで配信する行為もこの罪に問われる可能性がある。一方で具体的な事実ではなく単に「性格が悪い」などと抽象的な投稿をした場合には後述する侮辱罪に該当する。

 一方で、侮辱罪とは、刑法第231条に規定されており、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」とある。大勢の人のいる前やネット上で「バカだ」と言う行為が含まれる。

 いずれにしても、現代においては実際の会話を通じてというよりも、ネット上でのトラブルのほうが多いであろう。2017年にあおり運転により夫婦が死亡した事件で、加害者とは関係のない会社を加害者の勤務先として投稿したと男らが名誉棄損罪に問われ、11人が書類送検となった。この事件では最初にデマを投稿した男はもとより、そのデマを拡散させた者も罪に問われており、仮にデマを真実と誤認していたとしても、刑事責任を問われる可能性がある。ときどきSNSで「拡散希望」などとして個人情報や顔写真等を投稿する者がいるが、そのような投稿を安易に転載(リツイートなど)すれば、転載した者も罪に問われる可能性がある。ネットの情報はいわゆる「まとめサイト」なども含めて真偽が不確かなものが多く、知らずに犯罪に加担することのないよう十分に注意したい。