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温泉と法律

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 第30回 温泉と法律

 第30回は寒い季節に心も身体も温まる温泉に関わる法律についてお話しする。

 「温泉」とは、温泉法によると、①採取時の泉温が摂氏25度以上、②18種類の指定成分のいずれか1つが規定濃度以上、③溶存物質の候が1000mg以上、のいずれかを満たすものとされている。つまり25度未満の冷たい地下水でも、指定成分が含まれていれば「温泉」を名乗ることができる。また、地球内部のマグマの影響により、地中の温度は100mごとに3~5度上昇するため、地下水の水温もそれに比例して上昇する。近年は堀削技術の向上により地下千メートル以上掘削することも普通で、最近多い駅前や都心部のホテルの天然温泉はこれらの理由によるものである。このくらいの深さから真水が湧出することはあまり考えられず、日本全国どこでも深く掘削さえすれば「温泉」が湧出するのではないかと思う。

 温泉法施行規則では、施設内に温泉掲示をすることが義務付けられており、温泉に加水、加温、循環装置の使用、入浴剤添加、消毒処理などを行っている場合には、その旨と理由を必ず記載することとされている。これは、長野県内の温泉で名物の乳白色の温泉の色が薄くなったため、入浴剤を添加し白濁させるという偽装事件が起こり、のちに他の温泉街でも同様の事例がみられ、社会的に大きな関心を呼んだことから、規則の改正に伴って義務化されたものである。

 このように、ひとくちに「温泉」といってもさまざまなものがあり、筆者は月に数回道外の温泉旅行を楽しんでいるが、多種多様なお湯や温泉街の風情は各地で異なり、何年通っても飽きることがない。

 日本は古来より温泉療法も確立しており、一般的な外傷や痛みのほか、癌や精神疾患に効くとされる温泉もあり、長期通院している方であれば、湯治を試してみるのもよいだろう。

 法律を学ぶ者にとって、もうひとつ、温泉といえば「宇奈月温泉事件」を必ず思い浮かべるだろう。これは、富山県の宇奈月温泉で温泉業を営んでいた会社があり、その会社は温泉源から引湯管を敷設して温泉を施設に引いていたが、その途中に地権者と契約せずに敷設した箇所がわずかにあり、それを知った第三者がその地権者からその土地を買い取り、会社に対して法外な金額で土地を買い取るよう要求した事件である。この事件は現在の最高裁判所にあたる大審院において、一連の行為が所有権を持ってはいても権利の濫用にあたるとされ、のちの民法の改正において、その第1条に「権利の行使はこれを濫用してはならない」と成文化されるなど、歴史的に非常に意義のある判決となったのである。

 温泉を法律面から見てみると興味深いこともたくさんあるが、厳冬期のこの季節、あまり難しいことは考えず雪見風呂を楽しみたい。