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飲食店でのテイクアウト実施前に

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 第38回 飲食店でのテイクアウト実施前に

 第38回は飲食店に関わる許可について説明する。

 新型コロナウイルス感染症の影響により来店客の減少や休業等を補うため、料理のテイクアウトを提供している店舗も多いことであろう。ただ、テイクアウトの実施前に法的な規制も検討する必要がある。

 既存の飲食店であれば飲食店営業許可を受け食品衛生責任者を配置しているはずである。許可を受けた飲食店が、提供しているメニューそのままの状態のものを弁当として販売することは特段の許可は不要だが、煮物、焼き物、揚げ物などのおかずを単品で販売する場合は、別途、惣菜製造業の許可が必要だ。また、自宅で調理できるように生の肉や魚介類を販売する場合は、食肉販売業、魚介類販売業の許可が必要となる。さらに、この機会に自家製のパンやお菓子を作り販売したいというときは菓子製造業の許可、バターやチーズを製造販売するときは乳製品製造業、アイスを製造販売するときはアイスクリーム類製造業の許可がそれぞれ必要となる。ただし、製造許可を受けた調理場で個包装されたパンなどを飲食店の店頭で販売するときは製造業の許可は必要ないが、個包装に原材料名、消費期限、製造者の名称及び住所などを表示しなければならない。これら以外にも、店舗内で製造した清涼飲料水、味噌、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、マーガリン、豆腐、納豆、麺類、缶詰などを販売するには、それぞれ個別の製造業の許可が必要である。

 このように、飲食店内で加工・製造した食品を店舗内で提供する分には問題ないとしても、それをテイクアウトさせるとなると製造業の許可が必要となるケースが多く、注意が必要である。

 もっとも、時節柄、許可を管轄する保健所としても、不許可のケースでも直ちに行政処分したり刑事告発することはないと考えられるが、法令順守に努めることは事業者として重要であるし、許可を得ていない食品を提供して食中毒などが発生した場合、通常加入している生産物賠償責任保険で補償されないケースも考えられる。顧客が入院すれば休業補償をしなければならないし、死亡に至れば莫大な損害賠償責任が発生する。食品は直接顧客の体内に取り入れられるものであり、安心安全なものだけを提供しなければならず、飲食店にとっては大変な時期ではあり収入源を補いたい気持ちは十分に理解できるものの、安易に現在許可を受けていない食品を販売することは絶対に避けたい。

 この機会に、新しいメニューを考案したり、事業主や従業員のスキルやマナーの向上、資格取得など教育のために時間を充てることもできるだろう。老舗も新規店舗も生まれ変わることができる、大きなチャンスとなることを期待したい。