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離婚、財産分与、慰謝料に関するご相談

離婚による年金分割とは

 「熟年離婚」という言葉が定着しているように、近年中高年者であっても新たな人生の選択肢のひとつとして離婚を選択することが多くなりました。

 このように中高年者が離婚を検討する場合に、特に専業主婦である妻の場合、離婚後の経済的な負担を考慮すると、離婚がふさわしい状況であってもその後の自立した生活が困難であることから、離婚を躊躇せざるを得ない現状がありました。

 本来法律上は、夫婦が婚姻期間中に得られた財産については、夫のみが労働によって賃金を得ていたとしても、妻の貢献があったからその財産を築くことができたものとして、妻の持分を認めていることから、年金においても、平成16年の法改正により、離婚時年金分割制度が創設され、離婚した妻も最大2分の1の年金を直接受け取ることができるようになりました。

分割できるのは厚生年金・共済年金

 離婚時の年金分割の制度とは、公的年金のうち、厚生年金保険及び共済年金について、夫婦のであった者の一方の請求により、これまでの保険料納付実績を分割するものです。一方で、国民年金については分割の対象となりませんし、国民年金基金や厚生年金基金についても分割の対象となりません。

 また、たとえば月額20万円の年金を受給している夫婦において、離婚した場合に月額10万円を受け取ることができると誤解されがちですが、年金分割はその夫婦の婚姻期間等に納付された保険料のうち最大で2分の1の分割を受けることができる制度ですから、結婚が遅かった夫婦は婚姻期間中に納付した年金保険料自体が少ないため、婚姻期間が短ければ短いほど、最大2分の1の分割を申請したとしても、実際に分割を受けられる額は少なくなります。

離婚による年金分割の手続とは

 夫と妻は離婚する際に、双方の合意により年金の分割割合(「按分割合」といいます。)を定めることができます。

 手続にあたって、夫婦の一方は年金を分割して受給した場合にどのくらいの年金額を得られるかにつき、年金事務所に対して「年金分割のための情報通知書」の請求をすることができます。

 手続は、按分割合を記載した「年金分割の合意書」に夫婦双方が署名及び捺印し、厚生年金保険法第78条の2第1項の規定に基づく「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」とともに年金事務所に提出します。夫婦双方が揃って手続ができないときは「委任状」も必要となります。

 夫婦の間で協議がまとまらず合意に至らないときは、夫婦の一方の申立てにより当事者が合意で定める家庭裁判所または相手方の住所地の家庭裁判所に調停の申立てをすることができます。離婚自体が成立していない場合には、夫婦関係調整の調停に付随して、同じ調停内で年金の按分割合を定めることができます。

 調停が不成立になった場合、または離婚が成立したが年金分割の合意がなされていない場合には、相手方の住所地の家庭裁判所において審判を受けることができます。

年金分割で注意すべきこと

 夫婦双方の合意または家庭裁判所によって定めた年金の按分割合については、いったん定めた割合をその後変更することはできません。これは、按分割合を決めた後に経済的その他の事情が変化したり、後述する2年の請求期限の経過前であったり、詐欺または錯誤により誤って年金分割の合意をした場合でも同様です。

 また、年金分割の請求は、原則として、離婚した日の翌日から起算して2年以内に行わなければなりません。

 以上のことから、離婚をする際にはあらかじめ年金の分割をも考慮に入れて協議する必要がありますし、離婚後時間が経過すると合意が困難になることもありますので、離婚時に年金の按分割合についても公正証書等を作成しておくことが望ましいでしょう。